森鷗外記念館
東京都文京区
2012
本計画地は森鷗外が、明治25年から亡くなる大正11年まで過ごし、「雁」「山椒大夫」「高瀬舟」など数々の名作を著した旧居「観潮楼」の跡地に建つ。今は往年の面影が薄れているが、庭の大銀杏、門跡、三人冗語の石など、鷗外の足跡を忍ぶ史跡が残る。鷗外文学は、虚飾しない、美しく簡素な贅肉のない文体で構成されていることである。それは,漢文をはじめとした古典やドイツ文学に精通した教養を背景に、語りすぎない余白の文章である。本計画は、光、色彩、比例、素材の感触などを念頭に、簡素で無駄のない表現の中庸な建築である。鷗外その人と作品には遠く及ばないが、少しでもそれに照応する、静謐な凛とした佇まいの記念館をめざした。
Photography
Michiharu Baba